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「おわっ、たー」
始発が動き出すよりも早く、課長のおかげで仕事は終わった。
出社してきたお局様たちの顔を想像すると、楽しくて仕方ない。
「始発が動き始めたら一度帰ってこい」
「いいんですか?」
「小汚いまま仕事される方が迷惑だ」
「……ありがとうございます」
言い様は悪いけど、一応、私に気をつかってくれたんだよね……たぶん。
更衣室で着替えて帰りかけると、課長は休憩コーナーでコーヒーを片手に煙草を吸っていた。
「その、ありがとうございました」
「何度も云うようだが、君のためではない」
ふーっ、課長の口から長く煙が吐き出される。
……細身で、高い身長。
三つ揃えのスーツ。
シルバーの、ハーフリムの眼鏡。
壁により掛かって缶コーヒー片手に煙草吸ってるのって、半端なく絵になるっていうか。
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