課長と煙草と私

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最後の一口を吸い、課長は煙草を灰皿で押し消すと口端だけでにやりと笑った。 缶コーヒーを飲み干し、壁から離れる。 「課長は帰られないんですか……?」 「僕はまだ、仕事があるから」 自分の仕事があるのに、私を助けてくれた課長に感謝した。 でも、またなにか云うと機嫌を損ねそうで、黙ってあたまだけ下げて帰る。 一度帰って再び出社すると、苦々しげなお局様と涼しい顔で仕事をしている課長がいた。 ……それから。 私は課長のことをちょくちょく意識するようになった。 やっぱり口は悪いし、人に対する評価、それがたとえ自身であっても厳しい。 でも反対に、やる気のある人間には何度でも根気よく指導してくれるし、できたときはきちんと評価してくれる。 仕事の手を抜きたいお局様たちに嫌われてる反面、少ないながらも慕ってる人はいる。 そういう人だから、私はどんどん課長に惹かれていき、課長に認めてもらいたい一心で仕事を頑張った。 ……そしてバレンタイン。
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