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「課長。
これ、受け取ってください」
バレンタインは日曜日。
だから金曜日、帰ろうとしていた課長を引き留めてチョコを渡した。
……だけど。
「そんなことばかりにうつつを抜かしているから、いつまでたっても使い物にならないんだ」
皮肉たっぷりに酷薄な笑みを浮かべた課長の、ハーフリムのシルバーの眼鏡が凍り付きそうなほどに冷たく見えた。
「……確かに、入力ミスは多いですが、そんな云い方は……酷い、です」
じわじわと涙がたまっていく。
下に落ちないように顔を上げると、課長と目があった。
レンズの向こうの瞳は冷たく私を見つめてる。
「泣くようなことか?」
「……泣いてません」
「そんなに目を充血させて?」
「……っ」
悔しいが云い返せない。
課長は余裕で笑ってる。
いつもそういうところに腹が立つ。
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