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しばらくして船団は出航した。
この地域の領主と思われるマントの男は、
船団の先頭に位置する大きな船の船べりで、
今度の戦の作戦を練っている。
・・・さて、
彼の船が湖の中ほどにきた時、
一羽の大きなワタリガラスが、
領主がいる営倉の屋根にバササと留った。
ワタリガラスは、
小刻みに首をかしげながら、
領主に興味を持ってるようにも見える。
ガァァァ・・・
「ほう、珍しいな、
こんな人間の近くに・・・」
マントの領主は、
ワタリガラスを刺激しないように、
船べりに手をついてその鳥を観察しようと試みる。
だがその時、男は自分の耳を疑った。
何故なら、
そのワタリガラスの嘴から、
突然、人間の女性の声が聞こえてきたからである。
「 わたしはマリー・・・
今 おまえの船の下にいる・・・ 」
水しぶきをあげて水面から一体の人形が現れた!
「う お お お ぉ っ ! ? 」
その人形は、
後ろから領主の腕をガッチリとはさみ、
あっという間に男を水中に引きずり込んだのだ。
兵士達はその一瞬の出来事に、
何が起きたか、殆どの者が理解すらできない。
忠実な部下が湖に潜り、
領主を助けようと準備を始めるが、
あれだけの装備をしたままで、恐らくそれは叶うまい・・・。
そのうち、
もつれあった二体の身体は、
既に陽の光も薄い、
冷たく暗い湖の底に達しようとしていた・・・。
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