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Tシャツ
Tシャツが大好きで、夏でも冬でも一年中着ている。
中でも好みは、無地に大きな図柄が一つだけプリントされたタイプのものだ。
色は白でもそれ以外でもいい。単色に、前でも後ろでもいいから、一つだけドーンと大きな絵。こういうタイプのTシャツが大好きで、常に着てるし、見かければ高確率で買った。
最近のお気に入りはシュールな人物画で、線だけで描かれたデフォルメ人物がのシャツを日替わりで着ている。
でも今日は動物柄の気分なんだよな。
ハンガーにかけておくと型が崩れるので、Tシャツは一枚ずつ畳んでタンスにしまっている。多いので柄ごとに区分していて、動物系の箪笥を開くのは久しぶりだ。
犬、猫、猛獣小動物、鳥もこの分類だ。さて、どれにしようか…。
一枚を取り出し、俺は首を傾げた。
Tシャツに柄がないのだ。
背中側かと思い後ろも見るが、そちらにも何もなく、目の前にあるのはただの無地Tシャツだ。
無地なんて買ったことはないし、もらった覚えもない。でも確かにここにあるのは無地のTシャツだ。
まさか、プリントが丸ごと色落ちして、隣のTシャツに移ってしまったとかじゃないだろうな。
ありえないと思いながらも一応確認してみる。その途端、さらなる不思議が俺を襲った。
そっちのTシャツにも柄がなかったのだ。
慌てて上からざっと目を通してみるが、Tシャツはどれも無地で一枚も絵柄が描かれているものはない。
いったい何があったんだ?
無地のTシャツを次から次へと箪笥の外に放り出す。そして辿り着いた一番の下のTシャツを見た時、俺は他が無地になっている理由を知った。
一番下のTシャツの柄は虎だった。記憶ではしなやかな全身図だった筈だが、でっぷり太ったそいつは、パンパンに膨れ上がった腹を晒し、天を仰いでぐっすりと眠りこけていたのだ。
どうやら他のTシャツの柄たちは、コイツが食っちまったらしい。…どうやったのかは知らないが、俺が食われないという保証はないので、満腹虎が目を覚ます前に、コイツは処分してしまうとしよう。
Tシャツ…完
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