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彼女はそう言ってマスクの下の頬を緩めた。
『最初に俺に優しくしてくれたのはねえさんだもん』
そう。彼女はリュウジに金平糖をくれた、あの女性だった。
『リュウジ』
かれんは昔を懐かしむように天井を見上げた。
『そう言えば、あねさんが「いにしえ屋」のあにさんと共演なさるってのはまことの話かい?』
『うん』
『そうかい。やっと、お会いになられたんだね』
『ねえさん知ってたの?』
リュウジはかれんが事情を知っていそうな気がして彼女に聞いてみた。
『あにさんにお断りをいれるのはあたいの役目だったからね。あにさんの様子が必死だったのもあって、理由を伺ったのさ…』
『そうだったんだ』
『あねさんも、ずっと気にされていたし、神楽奉納にはいつもご一緒させていただいていたからね』
『そうだったんだ!?』
『ああ…事情を知っていたのがあたいだけだったからだろうね』
リュウジは初めて聞く話に驚いていた。
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