24人が本棚に入れています
本棚に追加
『かれんねえさん、実は俺、唯一無二の「うたい屋」になるつもりはないんだ』
『は?』
リュウジの言葉を聞いたかれんの声に動揺が走った。
『でも、あねさんとの約束はどうするんだい』
『あねさんには話した。分かってもらえたよ。だから、今日俺たちはここに来たんだ。新たな夢のために…』
『そうかい。でもね、あたいにとってはお前が唯一無二の「うたい屋」さ』
かれんはそう言ってリュウジの肩に手を置いた。
『かれんねえさん…』
リュウジの瞳が涙で潤んでいた。
『あたいだけじゃない。あねさんの店にいる子たち、みんな同じ気持ちだよ。あたいたちは、お前の歌声に救われてきたんだからね…』
『ねえさん!』
リュウジはかれんの名を呼びながら彼女に抱きついていった。
『皆さんの前でなんだい…』
『だってねえさん、昔から俺を守ってくれたから…』
『リュウジ、お前を守ってたのはあたいじゃないさ、あねさんだよ』
かれんの声は厳しさを含んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!