第5章

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『それは分かってるよ。でもねえさんは俺に初めて優しくしてくれた人だから…』 『リュウジ…』 かれんは少しだけうつむくとリュウジの胸に頭を置いた。 『それはあたいも同じだ。お前の歌声にあたいたちがどれだけ救われたか…』 「界隈」の権力者の女たちが蔑むのは「言いなり」だけではない。身分の低い者も蔑まれる。 店に訪れる客たちは、店の女たちにさえ辛く当たっていた。 女たちは、涙を堪え部屋に戻り悔しさに耐えるしかない。そんな時は、皆リュウジの部屋に集まりリュウジに歌ってもらっていた。 『リュウジ、お前の歌には傷ついた人の心を癒せる力があるよ』 かれんの言葉に部屋にいた皆が頷いた。 『ねえさん』
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