第5章

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そんな彼女たちを見てきたからだろうか、リュウジは女を憎むことはなかった。 自分を「言いなり」と呼び殴っていた女もいれば、自分と同じ虐げられる女もいる。そして、傷つくのは女も男も同じなのだと知っていたからだ。 そしてリュウジは思った。虐げられる人間の方が強く優しくなれるのだと。自分は決して誰かを傷つける側の人間にはなりたくないと…だからこそ、かれんの言葉が嬉しかった。自分に優しくしてくれる、家族のために自分の歌が役に立つということが。 だからこそ、リュウジが唯一無二の「うたい屋」になることは、店の女たちの夢でもある。そんな彼女たちの想いを知るリュウジは一時期かなり悩んでいた。ナオトとの約束、そして自分を応援してくれる女たちの想いを叶えてやれないことが、彼女たちへの裏切りになるのではないかと…
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