第1章

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男はバイクの後ろにくるまをつけた。それはいわゆる人力車。男はそれをバイクで操ろうというのだ。男がセッティングを終えると彼女はくるまに乗り込んだ。それを見ていた女たちから落胆のため息が漏れた。そのため息をかき消すようにバイクは走りだした。 しばらく走った後、バイクはある店の前で停まった。金髪の女はバイクから降りない男の背中に声をかける。 『手を貸しておくれでないかぇ』 小首を傾げ甘えたような彼女の声に振り返った男はバイクを降りた。そしてくるまの前に立つと彼女に手を差し伸べる。彼女は満足げに口許を緩めるとその手に自分の手を乗せくるまから降りた。 『おっと』 くるまから降りた拍子に足を揺らめかせた彼女は男にもたれかかった。男はさして動じる様子もなく彼女の体をその胸で受け止める。 『いつも乗せてもらうばかりじゃ申し訳ない。たまにはうちに乗るかい?』 彼女はそう言うと男の顎に手を掛ける。だが男はその手を振り払うと彼女に背を向けた。 『ケンジロウ、うちの気持ちは知ってるだろう』 去って行こうとするその背中に彼女が言葉を漏らす。
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