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『それにナオのあにさんと呼ばれるべきは他にいるだろう』
一瞬、男の口調が変わった。明らかに今までとは違う色が含まれている。だがオミはそれに気づかないフリをした。
『なら、ナオトのあにさんと呼びやしょうか』
おどけた口調で言うとナオトは扇で口許を隠しくすくすと笑った。
『ナオのあねさんでかまわないけどねぇ』
ナオトはまた扇を優雅に揺らし、自分の肩に手を掛ける女に視線を向ける。女はナオトの視線に含みを持たせた笑みで返した。まるで仲睦まじい恋人との一時を見せつけているかのように…
『で、一体何の用だい。昨日はエリーで、今日はお前…千客万来とはこのことだねぇ』
言葉の端を上げた独特の口調にオミは目を細めた。しばらく会わないうちに本当に女のような立ち振る舞いになっているナオトにオミは少々驚いていた。
『エリーは何しに?』
『さぁ、なんだったかねぇ。お前の用件を聞けば思い出すかもね』
オミの質問をはぐらかすようなナオトの答え。つまりエリーは具体的な話はしていないのかもしれない。オミはナオトを真っ直ぐに見つめると一気に距離を詰めた。
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