24人が本棚に入れています
本棚に追加
『ナオト、お前が欲しい』
オミがナオトの顎に手を掛け顔を近づけようとした時だった。オミがすっと身を引くと、目の前には小刀が付きつけられていた。
『何の真似だ』
ナオトに寄り掛かっていた女の一人が腕を伸ばしている。もう一人もその手を腰の刀へと伸ばしていた。
『ナオのあねさんに気安く触るんじゃないよ』
女の声は殺気を含んでいた。だがオミが向ける視線も女を射抜きそうな程に鋭く、そして冷たかった。
『「屋号」を持つ者に刀を向けてただで済むと思ってんのか』
『唯一無二でない「屋号」のくせにつけあがるんじゃないよ。ナオのあねさんは唯一無二の「をんな屋」てめえとは格が違うんだ』
『あんだと』
オミが女との距離を詰めようとした時
『やめな』
オミの動きはその一言で止まった。優しげな声。だがその声にはオミの背中に冷や汗を伝わせるほどの迫力があった。
『お前たち、下がっておいで』
『あねさん』
心配そうにナオトを見つめる女たち。だがナオトはその頬に手を添え、子供に言い利かせるような口調で言った。
最初のコメントを投稿しよう!