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『このままじゃ話が進まないだろ』
二人は視線を交わすとオミを刺すように睨みつけて部屋を出て行った。
『相変わらず女にはきついねぇ。女に食わせてもらってる立場のくせに…』
呆れたような声でナオトが言うとオミは俯いた。悔しそうな表情。だがナオトにはその気持ちが痛いほど分かった。
『食うためだ。この街で生きるにはそれしか方法はねーだろ』
『甘えんな。悔しいなら芸を磨きな。それをできねー奴がでかい口を叩くんじゃないよ』
耳が痛いとはまさにこのことだろう。自分と同じ立場だったタカノリとケンジロウも、自分にできることは何かを考え、そして唯一無二の「屋号」を手に入れた。
タカノリがオミに怒った理由もそれだと分かっている。だがオミにはオミなりの考えがある。それを為すまでは諦めるわけにはいかない。
『で、「をんな屋」ってわけか?「をんな」を売りにしてるなら、俺にだって抱かれるって言うのか?』
売り言葉に買い言葉。オミは口にしてはいけない言葉を口にしていた。
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