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『ナオのあにさん…』
『その呼び名で俺を呼ぶな。そう呼ばれていいのはナオキだけなんだよ』
今までとは違う鋭い視線。オミが口を噤む程に、ナオトは冷たい眼差しを向けていた。その瞳に宿るのは間違いなく怒り。オミはちっと舌打ちするとナオトに背を向けた。
『どうして会わないんですか、ナオキのあにさんに…』
掠れるような声で呟かれたオミの言葉。
『けぇんな!』
だがナオトはそれをかき消すように声を荒げた。オミが部屋を出ようとした時
『どの面下げて会えってんだよ…』
絞り出すような声が微かに聞こえた。
『失敗した』
オミはナオトの店を出ると振り返って頭をがしがしと掻いた。
「をんな屋」とナオトを煽ったはいいが、その色香に惑わされたのはオミの方。そのせいでナオキのことを誤魔化せなかった。
だが、ナオトのあの様子。一体二人の間に何があったと言うのか。
しかし、ナオトのあの色香。「をんな屋」を名乗るのは伊達ではない。
オミは先ほどのことを思い返し口許を手で押さえた。
『かなりヤバかった…』
呟いたオミの頬は朱色に染まっていた。
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