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夜の闇が街を包み込んだ頃、リュウジは足音を忍ばせて自分の部屋のふすまを静かに開けた。音に気を付けながらふすまを閉めるとふーっと息を吐く。
『遅いおかえりだねぇ』
突然響いた声にびくっと体を震わせたリュウジは奥に座っている声の主の姿に口許を引きつらせていた。
そこにいたのは扇をゆらゆらと揺らすナオト。彼は扇を閉じるとこっちへ来いと手招きをする。リュウジはごくりと唾を飲み込むと覚悟を決めてナオトの前に座った。
『昨日エリーが来て、今日はオミが来たよ』
ナオトはそう言うとまた扇を開いた。
『へぇ…何しに来たんですかい』
興味ない素振りでリュウジが聞くとナオトは可笑しそうに口許を緩めた。
『エリーは世間話しかしてないが、オミには…』
そこで言葉を止めたナオトにリュウジは視線を向ける。すると、わざとらしく扇で顔を隠したナオトが言った。
『俺が欲しいと言われたよ』
『はい?』
裏返った声で叫ぶリュウジ。ナオトはそんなリュウジの様子にケラケラと笑い声を上げた。そんなナオトにリュウジは顔を引きつらせて尋ねる。
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