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『あねさん、まさか…』
『危うく唇を奪われるところだった…』
その言葉にリュウジの顔に怒りが浮かぶ。
『オミの野郎!』
勢いよく立ち上がったリュウジを諫めるかのように
『冗談だよ。こっちがからかっただけさ』
『本当に?』
『ああ』
リュウジはナオトの肩を掴むともう一度聞いた。
『本当に何もされてないんすね』
まるで問い詰めるかのようなリュウジの額にナオトは閉じた扇をばしっとぶつける。
『あねさん、痛い』
『俺がオミごときに自分を売ると思うのか?』
『いえ…』
リュウジは叩かれた額を両手で押さえながら小さな声で答えた。
『しかしオミのあの色気。あいつが「をんな屋」に鞍替えしたら、俺の座も危ういかもしれないねぇ』
ナオトはそう言うとくすくすと笑う。そんなナオトを見てリュウジはぼそりと呟いた。
『あいつに「をんな屋」は名乗れねぇーよ。ナオのあねさんにしかその「屋号」は無理だ』
ナオトはリュウジに視線を向ける。だがリュウジは照れ臭いのか顔を向けようとはしない。
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