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女たちが部屋を出ていくとリュウジは嬉しそうに袋の中の金平糖を見つめていた。一つ取り出しては掌に乗せ
『きれい…』
と微笑む姿をナオトは愛おしそうに見つめていた。だがリュウジの隣に座ると掌の金平糖をつまむ。
『これは見るためのものじゃないよ』
『え?』
ナオトはリュウジの口に金平糖を突っ込んだ。
『あまい…』
『だろ』
ナオトの笑顔にリュウジは顔を赤くさせた。リュウジはナオトに視線を向け、きちんと座り直すと
『だんな様、俺はここで何をすればいいんですか?』
両手を膝に置いてリュウジは尋ねた。そんなリュウジの口にナオトはまた金平糖を放り込む。びっくりして目を丸くしているリュウジを見て微笑んだナオトは彼の頭に手を置いた。
『俺のことはあねさんとお呼び。ここに慣れるまでは何もしなくていい』
ナオトの言っていることがリュウジには分からなかった。
『でも俺は「言いなり」だから…何か仕事を…』
パシッと音がしてリュウジは言葉を止めた。頬に走る衝撃。その頬を両手で包むナオトの悲しげな顔がリュウジの目の前にある。
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