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『お前はもう「言いなり」なんかじゃない。いいかい、ここにはお前を「言いなり」なんて呼ぶ奴は一人もいない。そんなふうにお前を呼ぶ奴がいたら、俺が叩き出してやるよ』
ナオトはそう言うとリュウジの体を引き寄せて抱き締めてくれた。
『あねさん』
リュウジの瞳をまた涙が濡らす。ナオトはリュウジの頭を撫でながら言い聞かせるように言った。
『ここにいる女たちはお前の新しい家族。ねえさんって呼んでおやり。きっと喜ぶ』
『はい、あねさん』
素直に頷くリュウジ。
『ここに慣れてきたら、少しずつ仕事も頼むことになる。そうだ、お前は自分がやりたいことはないのかい?』
ナオトに聞かれリュウジは俯いた。だがちらりちらりとナオトを盗み見ている。ナオトはふっと口許を緩めると
『ないなら別にいいんだけどね』
と立ち上がって背中を向けた。
『お、俺…』
ナオトがその場で足を止めるとリュウジは身を乗り出して訴えた。
『俺、歌いたい』
その言葉にナオトは振り返る。
『歌?』
ナオトが聞き返すとリュウジは顔を真っ赤にさせている。
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