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結局三人はがちゃがちゃと言い合いをはじめ、見兼ねたのか今まで黙っていたケンジロウが割って入った。
『お前らいい加減にしねーか。ここをどこだと思ってる』
三人は我に返ったように黙り込んだ。本来ならばこの場所はこんな風に騒いでいい場所ではない。
ここは神楽堂。神に舞を奉納するための場所だ。そしてその神楽堂の舞台に座しているのは「いにしえ屋」ナオキ。この「界隈」で初めて「屋号」を授けられた男。
彼は古来より伝わる「神楽の舞」を受け継いだ、初めての男でもある。
『あにさん、騒がしくして申し訳ありやせん』
ケンジロウが頭を下げるとナオキは閉ざしていた瞳を開いた。
『それはかまわぬが…オミ、もし今度あにさまに言い寄るようなことがあれば、この話は白紙に戻すゆえ、その心づもりを…』
切れ長の瞳をオミに向け、静かに紡がれたナオキの声。だがそこにいた者は皆感じていた。静かな声の中にある、激しさのようなものを…
『あの…ナオのあにさん…』
リュウジが呼び掛けるとナオキは視線でそれに答えた。
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