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『なんであねさんのことをあにさまって呼ぶんですか?』
素朴な疑問だが、ナオキ以外の者は皆思っていたらしく彼に視線が集まっていく。ナオキは皆に見られているのを感じて瞳を伏せた。
『あの方はわたしにとってただ一人の兄弟子。昔、わたしとあにさまは同じ師匠の元で神楽の舞を学んでいた』
ナオキの言葉に皆驚きの表情を浮かべる。二人の関係は、彼らの知る由もない事実だったからだ。
『それなら俺たちに頼らなくても、あねさんに会えるんじゃないのかよ』
オミが不満げな顔でそう問うとナオキはゆっくりと首を横に振った。
『わたしが跡目を継いでから何度もあにさまにお会いしたいと申し入れているが、あにさまは一度足りとも会ってはくださらない。あにさまの舞う姿を見たいと店に足を運んでも断られるばかりで…』
『なんで?』
リュウジの言葉にナオキは分からないと言いたげな顔をした。理由があるのだとしたら、それを聞きたい。だがナオトは決して彼の前に姿を見せようとしない。
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