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『神楽の君さま、このような不出来な「言いなり」でございますが、この神楽堂でお使いくださいませ』
一人の女が舞台に坐す神楽堂の主に向かって頭を下げていた。その後ろには同じように頭を下げる男の子の姿があった。女はこの子を神楽堂に貢ぐためにやってきた。神に捧げると言えば聞こえはいいが、体のいい露払いだと主も察している。
『この子を神に捧げれば、二度と引き取ることはできぬがかまわぬのか?』
主の問いに女はつつましやかに微笑んだ。
『神の御許におかれるのです。この子にとってこれ以上の幸せはありますまい。ではよろしくお願いいたします』
女はそう言うと早々に立ち去ろうとする。男の子は去っていく女の手を掴んだが、女はきっと男の子を睨むとその手を振り払った。
『あ…』
男の子の瞳に涙が浮かぶ。だが女は振り返りもせずに神楽堂を出て行った。主は彼の隣に移動すると今にも泣き出しそうな男の子の手を取った。
『名前は?』
『ナオキ』
『こちらにおいで』
ナオキは自分に向けられるこの美しい女性の笑みに目を奪われていた。
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