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彼女はナオキの手を引いて廊下に出ると、ある部屋の前で止まった。
『ナオト、入るよ』
そう声を掛けるとふすまを開け中に入った彼女についてナオキも中に入る。その部屋には一人の少年が正座して頭を下げていた。
『顔を上げてよろしい』
神楽の君の言葉に少年は顔を上げた。少年は真直ぐに神楽の君を見つめていた。
『この子はナオキ。今日からお前と同じくわたしの弟子となる。ナオト、この子に舞の基礎を教えてやりなさい』
『俺がですか?』
師の言葉にナオトは驚いて声を上げるが、神楽の君は動じた様子もなく黙って頷く。
『お前のしていることを、この子にやらせればいいだけのこと。何が大切なことかをちゃんと理解していれば難しくはないだろう』
師の言い分はもっともなこと。ナオトに言い返すことなどできるはずもない。
『分かりました』
そう答えナオトはまた頭を下げた。神楽の君はナオキに視線を向けると
『この子はお前に任せる。ナオト、頼みますよ』
そう言ってナオキの手を離した。そして彼の頭を優しく撫でると部屋を出て行った。
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