第3章

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頭を撫でられた喜びよりも、彼女がいなくなることに不安を感じたのかナオキはまたその瞳から涙を零した。 そのまま泣き出したナオキに困ったような視線を向けるナオト。彼はナオキにかける言葉が見つからず、ただじっと見つめていた。 『ぬし様…』 ぽつりと漏らしたその言葉にナオトは目を細めた。 『ぬし様って、お前を捨てた主だろ?なんでそんな奴の名前を呼ぶんだよ』 『はは様だから…』 『は?』 ナオキの言葉にナオトは思わず声を上げた。 そう。ナオキをこの神楽堂に連れてきたあの女はナオキの実の母だった。彼女は自分が産んだ赤子が男の子だったことを知った時こう言った。 『こんな思いをして産んでやったのに…けがらわしい!』 ナオキはこの世に生を受けたと同時に母親に憎まれた。ナオキが男の子だった、ただそれだけの理由で。 母親である女はナオキが物心ついた頃には「言いなり」として扱うようになる。幼い身でありながら、実の母親からひどい言葉をぶつけられ、いつの頃からか殴られるようにもなっていた。
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