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『次に一緒に舞う時は見違えるほどの舞を見せろよ』
ナオトはそう言ってナオキの肩をぽんと叩いた。
『あにさま…』
『また泣く。兄弟弟子と言っても俺たちは神楽の舞の跡目を争っているのだ。お師匠様はいつまでも俺に甘えるなと言いたかったのかもしれぬ』
『あにさま以上に美しく舞える者はおりません。跡目はあにさまが…』
『そのような心持ちでどうする』
ナオトはそう言うとナオキを見上げた。いつの頃か自分よりも大きくなっていたナオキ。だがその心はまるで変わらない。自分のことを慕ってくれるナオキのことを、ナオトは本当に可愛がっていた。
『あにさま。わたしも精進して、あにさまに舞を認めてもらえるようになります』
ナオキは涙を拭うとナオトに向かってそう言った。
『そうだ。俺を越えるくらいの心持ちでいろ。俺たちは兄弟で、ライバルだからな』
ナオトはそう言って笑った。
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