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コーヒーのカップに、静かにミルクを注ぎ入れ、僕は一連の妄想を打ち切った。
目の前にはWordの起動されたノートパソコンが置かれているが、文章は一行たりとも書かれてはいない。
BL小説のお仕事をいただくようになって、もうすぐ半年。
今考えなければいけないのは、ミルクとコーヒーの年の差恋愛についてではなく、先日依頼された上司と部下の社内恋愛についてである。
白紙の状態の画面を見つめ溜め息をつくと、ポケットの中で携帯が震えた。
覚悟を決めて、電話に出る。
「もしも……」
『少しは進んだか?』
挨拶も、名前の確認もない。
相変わらず横暴な男だと思う。
「その、鋭意、創作中といいますか……」
『進んでないんだな?』
「……はい」
編集者というよりは、ヤクザだ。インテリヤクザ。
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