0人が本棚に入れています
本棚に追加
とある街道、とあるビルの路地裏、知っているものしか知らぬひっそりとたたずむビルの隙間にある木彫りでカフェと書かれたプレートをさげた扉の前。
箒と塵取りを持った男と手ぶらの女が話し込んでいる。
「オーナー。客こないっすね」
「そりゃそうよ、こんな路地裏にくる客なんて変人くらいよ」
オーナーと呼ばれた女は胸ポケットからタバコを一本取りだし火をつけた。
煙草の煙がビルの隙間の上へ上へと上がっていく。
男は昇る煙を見上げながら言う。
「相変わらずこの場所は静かですね、時が止まったような場所だなぁ」
男の呟きを苦笑いしながら女はタバコを持つ手と反対の手で腰にぶら下がっている懐中時計をつかみ沈黙する。
「ほれ、そろそろ常連さん達がくる時間だよ、準備してきなさい。」
「ヘイヘイ……オーナーは?」
彼女は、煙草を挟む指を軽く見せつけた、男は飽きれたように首を落し中に入っていく。
「サボろうとすんなよバイト君」
と扉越しに声をかけ一服し始めるオーナーの姿だけが残った。
最初のコメントを投稿しよう!