『臥し待ちの月』

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「俺はジュリエス、四男ね。十二歳。そう、大和さん、ジュリアンには似ていないけど、かっこいいよね。目、紫だよね。絵の中の人みたいだ。漫画に似ているよね。美形ってやつだ」  ミコトとジュリアンは、遠慮もなく俺を間近で見ていた。ミコトは、蹴られて倒れていた俺の頬に手で触れてみると、きゃっきゃっと騒ぐ。 「ほっぺ、もっちり」 「本当だ。すべすべで、真っ白。唇はぷにぷに」  ジュリエスも俺に触れて確認していた。ミコトは、今度は俺に抱き付いてきた。 「気に入った!持って帰る!」  ジュリアンに正座させられていたジョンの表情が、ぱあっと明るくなった。 「そうだろ!持ち帰りたいだろ」 「おだまり!」  ジョンは、ジュリアンに頭を殴られていた。  見ると、時季と響紀も、ジョンに並んで正座させられていた。 「俺はエリン。長男。今大学生です。将来の夢は、主に古典文学を続けたくて、教授になりたいです。よろしく大和さん。だから、俺は跡取りは大和さんという父に賛成」  次男は、トマスで機械の技術者志望、工学部の大学生であった。三男はジョージアで大学生であるが、フットボールだけが全てだという。 「……ジョン。かっこいい親父になって、息子の憧れになってよ」  子供は皆、母親を慕っていた。 「ジュリアンは尊敬しています。武器商人の家系というのも、分かっています。でも、ジュリアンを越す、実演販売人は無理だろうし、親父のように酒を飲んで、ついでに武器を売るというのも、特技で才能だと分かっています」  エリンは、つまり親を越せないから、越せる分野に進みたいらしい。俺も、殺し屋として親父を抜けないとは痛感しているので、気持ちは分かる。分かるからこそ、言いたいこともある。 「ジョンは、実演販売をしていたし、それなりに売っていたよ。戦闘にも出ていたし、傭兵もやっていた。その上で、飲んだくれて売っているわけよ」  特技や才能で片付けられない、努力と挫折があるのだ。 「パパ。傭兵もやっていたの?」 「まあね。若い頃は、この兄さんを殺したかったからね。本気でやらないと」  子供五人が、同時に俺を見ていた。 「大和さんは強いの?」  ジョンが頷くのを、五人が見てから、又俺を見る。 「ジュリアン、大和さんは強いの?」  ジュリアンは、艶やかに高笑いしていた。
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