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「大和。今回は迷惑かけたな。ここの機材は鬼城にくれてやるからさ。それで、手打ちにしてくれ。それと、大和、仕事を依頼したい」
ジュリアンは、胸の谷間からメモを取り出していた。
「昔馴染みの頼みでね。老後をひっそりと過ごしたいそうだ。けれど、宇宙中の刺客に狙われている。リクエストはきくそうだ。砂漠かジャングルか選んでいい」
選べるのは、それだけなのか。断るという選択肢がないのが、ジュリアンらしい。
「砂漠」
森に隠れるよりも、何も無いほうがいい。
「伝えておく。メモに連絡先がある。時季にでも交渉させて」
ジョンと一緒に正座させられていた時季に、手を伸ばし立ち上がらせるとメモを渡す。
「交渉します!」
時季も響紀も、俺の母親だから従って正座していたのではない。ジュリアンは、銃器も使うが戦闘機にものる。
かつて、鬼城から出した大罪人の孝太郎と戦ったメンバーで、度胸もいいが戦闘センスもすごい。理由は多々あるが……単純に、ジュリアンは怖いのだ。
「よし。時季、頼む」
でも、ジュリアンの笑顔は花のようで嬉しい。褒章のような気がする、笑顔であるのだ。この笑顔のために、ジュリアンの側近は必死で働く。
「響紀。今度の仕事は、響紀がメインだ。よろしく頼む」
「はい!」
響紀は、立ち上がるとジュリアンと握手をしていた。
どうにか、次の仕事は決まりそうであるが、道に積み上げられたような機材、これは鬼城が貰ってもよいものか。
「ジョン。ジュリアンはああ言っているけど。少し支払おうか?」
ジョンは苦笑いしていた。
「まあ、兄さんを奪えたら、手数料として置いていこうかと思っていましたから。大丈夫です。それより仕事が心配ですね」
仕事は、時季と響紀が引き受けると決めたならば、どうにかはする。
「それと、兄さん。離れているのは辛い。この姿を見つめているだけでいいのに!時々はジュノーに来てくれますか?」
がっしりジョンに抱き込まれる。
「まあ、時々、実演販売のバイトをさせてよ。銃器の補充をしたいから」
ジョンがニヤリと、仕事の顔で笑っていた。
「了解した。……エリン、聞いたな。息子共も証人だぞ。口頭でも契約が成り立った」
ジョンもジュリアンの息子、一筋縄ではいかない。
「はい父さん。大和さんとバイト契約が成立しました!」
ジョンは、強い笑顔を浮かべていた。
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