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「信頼と幸福があるよね。高麗は望んで、桜川の傍にいる」
俺が頭を抱えると、時季が両手で後ろから抱き込んでくる。
「俺も望んで大和の傍にいるよ。少しは、気遣ってよ」
そこで、何か引っ掛かりを感じる。桜川は、亜空間で荷物を運んでいた。桜川自身もしくは付近に、亜空間使いがいるということだ。それなのに、高麗の情報がだだ漏れなのは何故なのか。
桜川が、故意に情報を流しているのだ。高麗の情報が流れて困ったのは俺だ、こうして、護衛中だというのに、鬼城に呼び出されている。
もしかして、そういうことなのか、桜川は、鬼城が俺を呼びだすように、情報を漏らしたのだ。
「……時季、亜空間から桜川が攻撃を受けると、響紀に連絡して欲しい」
宇宙空間にはソニアが待機している。ソニアならば、どの宇宙船よりも早く、攻撃を察知するだろう。しかし、亜空間から攻撃機が出現したとなると、桜川の星では迎撃できる術がない。
亜空間を移動には使用しない。それが、鉄則でもあった。移動は可能だが、消滅する危険性が高い。
どこが、そんな危険な真似をするのか。
賞金によっては、どこでもするのか。
「時季、桜川付近の亜空間を全て閉じる。そう、桜川に忠告して欲しい。俺は、亜空間に入り、閉じてくる」
俺が立ち上がると、時季の顎に俺の頭が激突していた。
「いて!!」
時季はそれでも、俺の拙い説明を理解したようだった。
「しかし、桜川は何の目的で亜空間を使用するように仕向けたかな」
「それは、俺だよ。この状態の俺ならば、仲間を助けるために、亜空間を閉じ、相手を殲滅させるだろ。星を傷めずに、敵をまとめて殲滅可能になる」
操縦を時季に任せると、俺は亜空間の中へと移動してみた。亜空間は、無の空間ともいえるが、今は、桜川の付近と限定していた。
暗闇の中で、戦闘機の気配がする。針の穴のような光は、出口の印であった。誰かが、手引きしているのかもしれない。針の穴でも、戦闘機は出入りできる。
「閉じる」
光を閉じると、又、穴を開ける何者かがいる。この宇宙でゲートキーパーは三人。鬼城の一羅は、かなり昔から怪我のせいで、亜空間を与えていない。俺も、仲間以外に亜空間を与えるということはしていない。もう一人は親父であるが、親父の弟子?ならば、針の穴ではなく、窓にする。それぞれの、ゲートの形というものがあるのだ。
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