『臥し待ちの月』

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 針の穴とは誰のゲートであったか。一番近いのは、やはり一羅であった。俺のゲートは、目の形で現れる。  一羅は現在、ゲートを操る事ができないので、形状が変わる事がない。ならば、俺のゲートで上書きする。そして閉じる。  飛んで来た戦闘機は、他の亜空間へと流しておく。永遠の暗闇を飛び続ける事になるだろう。 「時季、亜空間を閉じた。響紀の方は無事か?」  コクピットに出ると、ソニアの映像が流れていた。  戦闘機は三機ほど出てしまっていた。ソニアが宇宙から、地上で百武が応戦している。響紀も戦闘機で応戦していた。今まで、戦闘機に乗っていたのは、俺か時季が多かったので、響紀も苦戦していた。響紀が戦闘機、すると、姶良がソニアの操縦をしているのか。 「姶良。当麻さんを探して欲しい」  姶良の画像が、コクピットに映った。 「当麻さん!」 「はい」  良かった、ソニアに来ていた。 「戦闘機に乗っていいですよ。怪我人、増やしてきてください」 「そうね、了解」  五羅の元仲間であるのならば、操縦できるであろう。今度、皆に戦闘機の乗り方を教えておこう。  桜川から戦闘機を離すと、宇宙空間で戦闘が始まる。俺が戦闘できないのが、もどかしい。俺はジュリアンの息子で、生まれた時から戦闘機をおもちゃにしていた。  でも、響紀と当麻の腕も確かで、ソニアのサポートも良かった。撃ち落とせはしなかったが、戦闘機が逃げ帰っていた。 「良かった。皆、無事で。亜空間に気付くのが遅れた、すまん」 「いいえ。大和からの連絡が無かったら、壊滅状態だったかもしれません」  響紀から通信が入っていた。  これで、亜空間側からの攻撃もできないと、知れ渡っただろう。次はどの手でくるのか分からないが、一難は去った。  しかし、鬼城の亜空間使いで、裏切り者がいたのだろうか。鬼同丸の亜空間は、基本、俺のものであった。俺が生まれた頃に、一羅が怪我をしたせいだ。新しい組の亜空間も俺のものが多い。俺は、幼少の頃より、鬼城で亜空間を与えていた。  では、かなり昔の鬼城の者ということになる。鬼同丸の最年長は、誰であっただろうか。確か医者のせいで、当麻であったが、それでも二十代であった。それに、亜空間も俺のものだ。 「桜川ではないですか?」  桜川は、鬼城に居た事があったのだろうか。ジュリアンの知り合いなので、あり得ない事もない。 「そうだとすると……たぬき親父だな」
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