『臥し待ちの月』

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 若き日の桜川は、護身術を学びたいと鬼城で修行していたという。どこかで、亜空間を知り、制御を学んだ。桜川の持っている亜空間は、一羅の親のものであった。 「長期戦ならば、チームを再編成するといいよ。新人も加えて実績を上げさせてゆく。その間に他の仕事も請けなさい」  一羅は、どこか寂しそうであった。 「うなぎ、美味しいですね」  窓を開くと、山が見えていた。山には夕日がかかっていた。今日中には出発したい。持ってゆく貨物は、時季が手配し積み込み完了しているし、燃料も補給している。あとは伊万里を呼ぶだけであった。 「亜空間、俺が行ってみようか?五羅の元にね」  鬼城の頭領はどうするのだ。次世代がまだ育っていなかった。一羅の子供もいるが、実績はいまいちで、仲間の信頼もまだ薄い。 「俺は次の頭領は、五羅だと思っているのよ。あれは適任だし、今の鬼城を変えてゆく。俺が代わりに、孝太郎を抑えていようかと思う」  一羅はゲートキーパーでもあり、孝太郎の力を抑えることができるかもしれない。でも、鬼城が一羅を失っていいはずがない。 「一羅さん、怪我もあるでしょう。それに、鬼城を支えているのは、一羅さんですよ」  一羅が又、寂しそうに笑った。 「いや……このままでは、鬼城はダメだよ。孝太郎を倒して、亜空間使いの巣に戻さないといけないよね。五羅は正しかった」  夕日が燃えているが、燃え尽きる色でもあった。その前に居る一羅は、俺の親の年齢になっていた。いや、二十三年前で既に親の年であったので、更に年を取ったのだ。 「それに、鬼城の再建のために、大和はゲートキーパーとして残さないといけないからね」  孝太郎が亜空間に存在しているので、次のゲートキーパーが出現しないとも言われていた。ゲートキーパーは、産まれる前の、腹の中でも、亜空間を呼び、あれこれ迷惑な行動を起こす。そうやって制御を学んでゆくのだが、今、亜空間は孝太郎の影響が大きく、呼んだ瞬間に赤子ならば消えてしまう。 「孝太郎を倒せば、ゲートキーパーは産まれます。俺が行きます!」 「時季!」  一羅が、険しい表情になった。 「はい!」 「大和を守れ。決して、孝太郎の元にも行かせるな!」  鬼城の頭領からの指示であった。 「はい!」
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