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ウナギの味も無くなりそうであった。鬼城の寿命というのは、何歳であっただろうか。シェリエは長生きなので、他の種族の寿命を忘れてしまう。シェリエも本来は、ゆるやかな時間の中で生きている。
「大和、五羅を頼むよ。鬼城はな、同性婚も認めているからな。生涯の相棒でいてやってくれ」
どう解釈したら良いのであろう。鬼城が、同性婚を認めていたとは知らなかった。もしかして、鬼城は認めていても、鬼城家は認めていないのではないのか。
「時季、もしそうなっても、恨まずに、大和と五羅を頼む」
時季は微妙な表情をしていた。
一羅は、やるよと言って、手をつけていなかったウナギをくれた。そして、勘定を払うと帰って行った。
「シェリエは長生きだけど、呼吸も少なく、というか、していない時の方が多いし、省エネだよね」
そう言って、ウナギは時季が食べていた。そこで、シェリエが出てくるのが不思議だ。
「時季のシェリエの情報源は、当麻か?」
「そう。よく知っておけって、響紀も学んでいるよ。扱い方や、管理方法、抱き方とかね」
そんなものを学んでいたのか。まるで、ペットを飼っているようだ。
「時季……あのな」
「俺の最高で最強の宝物だからね」
ウナギを食べながら、キスしないで欲しい。ウナギの味がしたキスになっていた。どこかで、山椒の匂いも漂う。
けれど、一羅も亜空間経由で五羅に辿り着く方法を考えていたのか。
ウナギを食べてから、歩いて鬼同丸に向かった。この道は、夕日に向かっている。
正面に大きな夕日があった。こうやって、昔も仕事が終わると、よく一緒に帰った。
「大和、鬼城の呼び出しは、通信で済む内容だったような気もする」
そうでなければ、まるで、一羅が別れを告げに、俺を呼んだ気もした。一羅を、孝太郎の元に行かせるわけにもいかない。
「親父に連絡を取ってみるよ。一羅は鬼城に必要だからね」
親父もゲートキーパーなので、何とかしてくれるかもしれない。
「一羅さんは、本当に凄い人だよね」
山から鬼城の町を見る。ここが平和で、皆が仕事をしているということが、一羅の実力であるのだ。誰も、鬼城家のある、この星に攻め入ろうとはしない。
「……失えないよね……」
一羅を、孝太郎の元へは行かせない。
鬼同丸に到着すると、伊万里が準備を終了していた。
伊万里は、荷物を纏め、玄関先で待っていた。しかし、他に数名の姿も見える。
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