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比重の大きい人間とでもいうのか、密度の濃い魂のようなものを感じる。
「で、俺に用だろう?」
眠いが、この変な存在が近くにいると、眠れそうにもない。
「俺に亜空間を教えてください」
「伊万里に言え。亜空間使いでは、伊万里の腕のほうが上だから」
さて寝るかと、又横にはなってみたものの、間近で心吾が見つめていた。
妙な感覚、心吾の存在が、すごく重い。この重さは、どこかで覚えがある。亜空間から仲間を引き出した時、亜空間に飲まれそうになった。引き揚げる船よりも、大きな船でないと亜空間に引っ張られる。もしかして、人も同じであったのか。
俺の存在が軽いので、孝太郎に飲まれそうになるのか。
俺は、目を開くと、心吾をまじまじと見た。
「融合は、それが限界なのか?」
「いいえ。あと二・三頭はいけますよ」
孝太郎に勝る比重の魂になれるのか。
「象とか馬か?」
「いや、クジラとかイルカが好きですね」
鬼城には海がない。
でも、これは伊万里に頼むしかない。俺は教官であるが、専門は銃器になる。それに、生まれながらに亜空間があったので、教えるのが下手なのだ。
「伊万里に頼んでおくから、今は眠らせて」
「傍に居てもいいですか?貴方は不安定に見える。空間に対しては儚く、存在は大きい」
近くにいたら、眠れない。
「俺はゲートキーパーなの。儚いのではなくて、空間にとっては半分の存在。常に、半分しか存在を空間に置いていないので、残りの半分と繋がっているゲートを使用できる」
こんな説明はした事がなかった。ゲートキーパーにもタイプが色々あったと聞くが、俺は、半分のタイプであった。それは親父も同じで、どこか儚い。
「そうなの?半分はどの空間にあるの?」
時季が驚いてどうする。
「どこの空間とかはないよ、例えるとそうだということ。俺が今、半分に見えるか?」
存在が希薄であるので、俺は亜空間をこちら側に繋ぎ止める必要がある。亜空間を分け与えると、それだけ、繋ぎ止めた事になっていた。
「だから、亜空間には亜空間使いなのですね。その軽さでは、どこへでも行ける代わりに、帰って来られない」
改めて指摘されれば、その通りであった。
しかし、それならば、心吾の存在ならば、亜空間経由で、相手を引っ張ることができるということか。
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