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鉄鎖の黒組出身。それは、暗殺部隊のエリートでもあった。元が火の屋で殺し屋の一族の出身なので、暗殺部隊には合っていたのかもしれない。
「今日は帰りましょう。あ、途中でうどんを食べていきましょう」
袈裟丸が、俺の手を掴み、明るい笑顔で口入屋を出てゆく。しかし、俺達には事情があるので、金を必要としていた。そんなに仕事を選らんではいられない。
俺達、組名、鬼同丸(きどうまる)は、仲間を失踪させたままなのだ。それも鬼同丸の主要メンバーを失踪させている。鬼城家は捜査を打ち切っていて、探すのならば自分達で捜査費を出せという。しかも、任務中の行方不明だったので、捜査には本部の許可を必要としていた。
でも、仲間を助けに行きたい。それには、金を稼がなくてはならない。
一旦、戻ってから、又来るか。鬼同丸の俺の所属するチーム、鬼同衆では暗殺の仕事を請負うことが出来ない。しかし、俺は鉄鎖の出身なので、鉄鎖経由で暗殺の仕事を引き受けることはできる。
鬼城の本部を出ると、大通りに出た。鬼城は、その街並みから観光客も多い。通りには、多国籍な人間が行き交っていた。しかし、路地に入ると、観光客は近寄って来ない。それは、やはり、鬼城家が闇の部分の仕事も請け負う連中と知っているので、怖いのだろう。
細い路地を抜けてゆくと、家と家の隙間で商いをしているような、うどん屋があった。暖簾は地面まで伸び、紺地に白文字で、丸とだけ書かれていた。
「丸?」
袈裟丸は、迷わず中に入ってゆく。
俺は、このうどん屋に入るのは初めてであった。
「おっさん、うどん二人前」
袈裟丸は、奥に入ると丸椅子に座った。俺も入ると、店内を見回す。
「うどん、大盛りかい?味は?」
店主は、片足を失っているので、元、鬼城家のどこかの組に所属していたのだろう。任務で怪我をして引退した者も、この星には多く存在していた。
「超大盛りで、醤油。大和は、どうします?」
「大盛り、塩味。薬味はねぎで多め」
俺は、袈裟丸の横に座った。ここ、店内というよりも、道であった。上を見ると、屋根はなく空が見えていた。
「塩味ってのは、初めて聞きました。大和は、いつも塩味なの?」
年は袈裟丸の方が上であるが、俺は鬼同丸の頭領代行であった。どうも口調が、丁寧になったり、年下扱いになったりと入り混じる。
「塩が好き」
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