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可能性は分かったが、三日は短い期間であって、今は眠りたい。俺は一週間程度は眠らなくても、呼吸をしなくても平気だったが、既に一週間を越え眠っていないのだ。
「手を握っていますので、眠ってください」
手を握るな。しかし、手を握られると、睡魔に負けていた。
夢なのか亜空間か分からない場所で、俺は、胡坐をかいて座っていた。
高麗の映像が、空中でテレビの画面のように光り、幾つも飛んでいた。どうやって、高麗に鬼城を抜けろと説明したらよいのか。他に、銀狐にどう謝罪をしよう。
『大丈夫ですよ大和さん。俺が銀狐に説明しました。それに、辞めると伝えてあります』
俺の都合の良い夢であった。高麗の声が聞こえていた。
『それと亜空間の映像は、消して欲しいです。俺、死ぬほど恥ずかしいです』
初体験から、試行錯誤し、慣れるまでの記録であった。
「高麗、鬼同丸に帰ってきてよ」
『そうしたいですが、俺の体が、半分機械なのです。安定していなくて、電気信号を与えないと、溶けて消えます』
溶ける?雪だるまみたいな存在であった。
「もしかして、桜川の機械のボディは電気信号が出るのか?」
『そうです』
騙されているのではないのか。そうやって、桜川は、高麗が逃げられないようにしているとも考えられる。
『それに俺は桜川さんを愛しています』
これ以上は言えない。
夢かと思っていたら、眠ったまま通信していたらしい。亜空間を通じて、S級に配信していた。
目が覚めると、あと少しで桜川の星に到着というところであった。心吾は食事のために、部屋に戻っているという。
「伊万里」
コクピットから出て、伊万里を探してみた。
「何ですか?」
伊万里は、五羅に付いてきた一人で、古参になる。
「心吾に亜空間への、出入りを教えてやって欲しい。あれは中で何かを持ってくるよ」
「分かりました」
伊万里は、苦笑いしていた。そう言えば、俺は伊万里に無理ばかり頼んでいる。亜空間へは、保管と取り出しが基本なので、出入りは高度なテクニックとなっていた。
「多分、心吾は、孝太郎から、五羅のいる亜空間を奪える」
伊万里の顔から、笑いが消えていた。
「了解」
伊万里も五羅の事となると、本気になる。そもそも、伊万里も五羅に本気で惚れ込んで付いてきたのだろう。
「ソニアに帰艦する」
俺はコクピットに戻り操縦桿を握る、自動操縦を切ると、ソニアに入って行った。
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