『臥し待ちの月』

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 地上五十メートル付近に、個室が並ぶ。並んでいるが、これが、ショッピングセンターのように長い、一体何部屋製作したのだろうか。  個室を抜けると、キッチンと食堂が独立してあり、その先に体育館のような集会場があった。  個室の途中から、上の階が見え、上の階には作業場と貯蔵庫、保管庫、格納庫と続いていた。  最上階に、滑走路を含む発着場がある。木造で、よくここまで出来たものだ。しかも、支えているのは、生の木であった。巨木だが、百本を超える柱で支えている。  床の下を縦横無尽に走る、補助柱で、重さを分散しているのだろう。 「……よくできている」  仕事の期間は、三カ月だったような気がする。桜川に、更新できるように話してみよう。この基地は、使い捨ては勿体ない。 「時季、桜川に面会に行ってみる。ついでに、亜空間の師匠を引き受けて欲しいと相談してみる」  上の階に時季の姿を見つけて、話しかけてみた。 「俺も行く」  時季は、上の階から飛び降りてきた。  地上はシダの胞子が飛んでいるので、木の上を飛びながら移動する。こうしていると、鬼城が忍者の星と呼ばれるままの姿であった。実は忍者と言われたのは、亜空間使いが多かったので、物を消したり出したりが多かったせいだ。魔法使いと呼ばれなかっただけいい。  桜川の敷地に到着すると、刺客と見られる影を見つけた。塀の上に居るのだが、まだ誰も気付いていないらしい。  俺は腕から糸を出すと、影を絡ませ、地上に落としてみた。慌てた影が、亜空間に消えようとしたが、亜空間を閉じていた。 「どこの所属だ……」  近寄る前に、自爆していた。 「自爆が早すぎないか?」  しかし、呑気にしている間もなく、次の刺客が森を抜けてきていた。どうして、こんなに刺客が多いのだ。俺の居ない短い間に、一体何があったのだろうか。 「時季」  時季が煙のような姿になると、ふわりと消え、刺客の首を折ってゆく。  今度は集団で来たのだが、森には俺の糸が張り巡らされていた。引くだけで、全てが肉塊になる。 「なあ、鬼城って知っているか?俺達、暗殺部隊にいたのよ。殺すのは簡単なんだけど、どこから湧いて出てくるのか、知りたいな」  糸に絡まって、首が取れ掛かっている男に近寄ってみた。 「誰が教えるか」  自分から糸で首を切っていた。
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