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刺客は分かるが、この自爆までの早さが気になるのだ。こんなに、頑張らない刺客というのもいるのか。
周囲に気配が無い事を確認すると、桜川の敷地の中に入ってみた。
敷地内では、袈裟丸と御厨が、銀狐と護衛を行っている筈であった。
俺が庭に抜けてみると、中央に不思議な物体を見つけた。
「袈裟丸?」
庭の大仏は袈裟丸で、座禅を組んで座っていた。
「袈裟丸。外が刺客だらけだけど」
「中もです。一日、二十人は刺客が来ます」
それで、どうして、ここで座禅を組んでいるのだろうか。俺も座禅を組んでみると、隣で時季も同じように座禅を組んでいた。
「何をしているのですか?」
銀狐の御卜が、近寄りながら呆れて見ていた。御卜、やはり可愛い。じっと見つめてしまうと、袈裟丸が慌てて立ち上がり、前を遮った。
「……大和。ここは亜空間のポイントのようで、抑えるために、俺が座っていたのですよ。大和ならば、塞げばいい」
「そうだね」
ポイントなのか、ここは数ある内の一つであろう。
俺は、亜空間に手を入れると、ポイントの全てに糸を張り巡らさせた。この糸は鬼城の技ではなく、火の屋の殺し屋技であった。
「俺、ゲートで力負けしていてね。情けない限りなのよ。で、糸を張ってみた」
出ようとすれば、糸は人を引き裂く。
本当に俺は情けない。殺し屋技では親父に敵わず、機械の面では母に敵わない。亜空間では力負けした。
「……シェリエの生粋に近いですからね。でも、大和は全部同時に使えるでしょう」
どれを同時に使うのだ、声の主を見ると桜川であった。
「あの、桜川様、亜空間を閉じませんか?刺客が通り放題ですよ」
「いい臓器提供者ではないですか。この星の法律は、死体の臓器を使ってもいいのですよ」
この地域の法律なのだろうか。
「正当防衛もありますか?」
「全部正当防衛で処理していますから、安心してください」
桜川がにこにこしていた。ここの患者は、刺客の臓器を使い放題なのか。桜川も、あくどい商売をしている。
「あの桜川様。高麗は元気ですか?」
桜川は、空から来た刺客を見ていた。天から湧くように、人が降ってくる。
「時季、頼む」
「はいよ」
俺が空に糸を張ると、時季には糸が見えているのか、器用に歩いて空に出た。そこで、一人一人素手で倒して地上に落とした。落とした刺客は、すぐに係員が来て片付けてゆく。
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