第五章 桜川 伊都(さくらがわ いつ)

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「降りてよし」  森と言ったが、しかし、木が大き過ぎる。 重力が高く、酸素濃度があるせいなのか。 木は、高さが百メートルから百五十メートルはあある、 幹は直径五メートルはありそうであった。  木は頂上部分にしか枝や葉はなく、地上には巨大なシダ類が生えていた。 シダの葉が、俺の身長よりも高い。 まるで小人になった気分であった。 「前進!」  シダの中を進む。 シダは柔らかいが、揺れると胞子のようなものをまき散らす。 有害ではないが、肌に付くと胞子が発芽し、肌の上で根を張ろうとするので、 まるで虫のように動く。 急いで払いのけないと、根が皮膚を刺してきて痛い。
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