第六章 夜咲く花と、 散る花と

23/30
前へ
/306ページ
次へ
 手や足の状態、内臓の温度、数字の高麗はどこか悲しい。 これが、愛なのだろうか。  俺の後ろから、時季が抱き込み、同じ映像を見ていた。 時季が俺の頭を撫ぜて、後ろに座った。 「映像は全て、当麻に渡しています」 「数値も渡さないと意味がないよ」  それは、高麗が壊れてゆくような、数字の羅列であった。 桜川が見ている高麗は、この数字の羅列であり、 その移り変わりなのだ。  高麗は、機械の半分を外され、新しいナノマシンを与えられた。 ナノマシンは、DNAが組み込まれ、高麗の一部に形を変えていった。 それは、生きた機械であった。 表面の皮膚は生身のもので、神経も生身であった。
/306ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加