第三章 本当の夜というもの

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「鍋と酒……五羅も好きだったよな」  五羅がよく、窓辺に座って皆を見ながら、酒を飲んでいた。 黒の半纏に、派手な刺繍。 忘れることもなく、くっきりと覚えている。  時季も、五羅のいた窓辺を見ていた。 「なあ大和、仕事の前に、山でしたいのだけれど、 いいかな?」  何をしたいのだ。 「却下」  俺は、この時季と、響紀と肉体関係もある。 仕事と恋は別物で、一緒にしたくはないのだが、多分、恋人である。 何よりも失いたくない者が、俺にとってこの二人であった。 「では、室内でもいい」  そういう問題ではない。  時季は、真面目に俺に問い掛けていた。
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