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「いいものは、ないな……」
俺が溜息をつくと、
隣にいた袈裟丸(けさまる)も溜息をついた。
袈裟丸は、何気なく俺が掲示板を見易いようにと、俺の後ろに立ち、
人ごみの中で、俺の為に小さくスペースを確保してくれている。
俺は、身長が低いわけではないが、見た目では小さく見えるらしい。
それに、火の屋の血統の特性なのか、十代に見られることが多かった。
しかも、童顔とも言われてもいた。
「大和。大丈夫?狭いけど苦しくはない?変な掲示板を取らないようにね」
袈裟丸が、俺を子供扱いしてくる。
「袈裟丸、取るような仕事はないだろ」
袈裟丸は、俺と同じ組、鬼同丸の所属で、一緒に仕事をする仲間であった。
俺のチームは、俺が一人で仕事を見て来ると言ったのに、
全く信用せずに、袈裟丸をお目付け役に寄越したのだ。
でも、俺と袈裟丸は結構気が合う。
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