第三章 本当の夜というもの

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 通りの外れには川があって、同じくレンガの橋がかかっている。 遠くには、山も見えていた。  特徴があるような、ないような街。 あるといえば、このような世界は、どこにも存在しないということ。  鬼城 五羅。 鬼同丸の頭領であり、憧れの存在であった。 着物を好んで着ていた。半纏も好きで、背中にあれこれ刺繍を入れていた。 「五羅……」  五羅の姿が浮かぶと、周囲は闇に満ちていた。  ツンツンと尖ったくせのある髪、 吊り目ぎみの目、その瞳の光と輝き、自信に満ちた笑顔。 四歳年上の兄のような存在だったが、どこか遠い世界の人でもあった。 『大和、ここへは来るな。 俺は、相討ちでこの世界を閉じるつもりだ』
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