第三章 本当の夜というもの

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 それならば、俺も行く。 そうすれば、他の仲間を、この世界に帰せる。 そう言おうとすると、五羅が首を振る。 『大和。俺の愛したお前だけは、生きて帰って欲しかった』  愛したなんて言わないで欲しい。 俺は、家族を愛して、妻を愛していた。 子供を愛して、一緒に生きてゆくつもりだった。 『それで良かった。 俺は、大和の家族も愛していたよ。大和の幸せだけを願っていた』  五羅が、困ったように笑う。 『……大和、愛しているよ。 世界中の誰よりも何よりも、俺は大和を愛している。生き延びて欲しい。 大和がどこかで生きていると思うことだけが、俺の糧になっている』  愛しているならば、生きて帰って来て欲しい。
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