第三章 本当の夜というもの

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『悔いはないけど、未練といえば、 大和を抱いておけばよかったということだけ』  これは、本当に幻影なのか。妙に五羅の表情が豊かで、俺の心に刺さる。  もしかして、これは幻影から亜空間にシフトしたのではないのか。 もしかして、本物の五羅ではないのか。 五羅から、俺を抱きたいなどという台詞は聞いた事が無かった。 「五羅、俺、家族に捨てられて今は一人だよ。 だから、いいよ。何をしても」  幻影でもいい、闇の中から五羅の手が伸びて、俺の頬に触れる。 ほのかに温かい手は、俺の頭を包み込むと、そっと唇が重ねられた。 うぬ?口の中に何かがあるような、 瞬きすると、周囲の闇が消え、大広間に座っていた。
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