第1章

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 目が覚めたらベッドに横になっていた。起き上がろうとしたら後頭部に酷い痛みを感じた。  ほぼ同時に部屋のドアが乱暴にに開かれた。中年の女性が立っていた。女性は目がどれだけ開くか挑戦しているかような驚きの顔をしていた。女性が言葉が失ってる間に私が先に質問を発した。 「あんたは誰だ、それから私は誰だ。」 後頭部からは派手に血が出ていた。シーツは真っ赤で、私の顔もケチャップをかけられたように酷いものった。女性は何のことはない、私の妻だった。 彼女は手際よくシーツを片付け私の頭を消毒し包帯を巻いてくれた。 私と妻はベットに腰かけて話した。妻によると私の部屋から争うような物音がしたので行ってみると裏口から人影が見え逃げるように家から出て行ったそうだ。妻はその人影も気になったが私の方心配なのでまず私の部屋に来たとのことだった。 私の部屋はひどく殺風景だった。壁には、額、ポスターの類はなく、カーテンも暗い青で、私は雨風がしのげればいいという考えの持ち主だったのだろう。その中で丸テーブルの上にある写真に目がついた。それは若い女性だった。切れ長の目、セミロングの黒髪、肉厚的な唇が印象的な二十歳かそこらの娘だった。妻に聞くと私の子供だという。 「あきれた。あんなにかわいがっていた娘も本当に記憶をなくしたのね。」 いまはオーストラリアに語学留学中で来年帰国の予定だそうだ。もっとも、向こうの生活はずいぶんと快適らしく、ちゃんと帰って来るか保証のの限りではないそうだ。 とりあえず応急措置だけなので近くの病院で診てもらうことになった。 「その前にあなた、食事まだでしょう、外は寒いから、何か温かいものをつくってくるわ。」 妻はキッチンへと出て行った。私は自分の部屋のはずなのにどことなく居心地の悪さを感じた。気を紛らわすため部屋を散策した。机の椅子にズボンが無造作にひっかけてあった。ズボンのポケットから財布が出てきた。財布の中には、紙幣数枚、小銭、免許証他カード類が入っていた。 免許証をみてみる、昭和53年6月10日生まれ、今日は平成28年2月14日だから、37歳か、あれ?写真のわが娘は大学生だから20歳くらいとして17歳のときの子か?ずいぶん早婚だったんだな。
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