『人喰いの橋』

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 大黒は、琥王に紙袋を渡していた。 「それと、薬師神にも、これ渡しておく」  大黒から渡された紙袋を開くと、そこには、木彫りの熊のキーホルダーが幾つもあった。この木は、樹神付きであった。 「熊ですか?」 「いや、よく見て。犬だよね」  熊か犬かの問題ではない。 「開運ではありませんね。これ、俺が遠視するための座標のようなものですね」 「正解!」  樹神の木の位置ならば、たとえ闇でも、俺には遠視が可能になる。 「友達に渡しておくといいよ」  俺の友人が狙われているということか。 「琥王。闇と厄とは別物だからね」  大黒は、俺の紙袋からパンを漁ると、他の車両に戻って行った。 「琥王は何を頼んだの?」  琥王は、袋の中身を見せてくれなかった。  学校に到着すると、全校集会の知らせがあった。急遽、ホームルームの時間に、体育館に集合せよという。内容は、天満のことであった。未だ、何があったのかも、犯人も分からない。  その全校集会の最中に、天満の訃報がやってきた。 第七章 眠れない夜  藤木に続いて、天満がいなくなってしまった。芽実は、怖いので、夜のバイトは絶対に来ないでと念を押してきた。  学校が終わり、琥王とえんきり屋に行くと、塩冶もピリピリしていた。 「桐生さん、塩冶さんはどうしたのですか?」  桐生は、カップを磨きながら、塩冶をチラリと見た。 「君たちをどう守ろうかと、あれでも、必死に考えている。塩冶様からは、家に連れて来いと言われているらしいよ」  俺は、塩冶に声を掛け難く、無言で屋根裏へと登っていた。  今日は、慌ただしかった。教室は、まるでお通夜であって、住吉など言葉が出なくなっていた。  先生も泣いていて、今日は、クラブ活動をせずに帰りとなった。学校のセキュリティーも見直しになるらしい。  俺は、昨日、泣けるだけ泣いた。だから、もう天満の件では泣かない。  屋根裏で、塩冶の資料に目を通す。塩冶も、遠視以外での人探しをするなという。 「天満が見てしまったものって、何だろうな……」  テレビで、天満の行動が詳しく報道されていた。朝のジョギングをして帰宅、シャワーと朝食を採り、自転車で学校に向かった。自転車は、家の前の公園で見つかっていた。では、天満は家の前で拉致されてしまったのか。
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