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同じく神憑きである、琥王にも呪いはかけられない。
「もしかして、信者なのかな。保険金で生活していると言っていただろう。呪って事故死させれば、保険金は高いし、他にも手当てがあるかもしれない」
琥王と、暫し無言になった。その可能性は高い。
階下で梯子が揺れると、塩冶が真面目な表情で登ってきていた。
「薬師神君コーヒーね。琥王には、カフェモカ」
塩冶は、屋根裏にやってくると、胡坐をかいて座った。
「薬師神君。家にね、暫く、七五三野が同居する。俺のトレーニングルームで寝起きさせる」
護衛という意味であろうか。
「琥王、自宅で一人の時は、俺の家に来ていなさい」
最近、琥王の妹の椰弥は、大黒の店に入り浸っているという。大黒には、神々廻がつく。
「あと、大黒君にも、一人の時は家に来ていていいと言っているから」
塩冶は一人を好むが、そうも言っていられない状況なのだろう。
「あまり、出歩かないでね……」
塩冶は、真面目な表情のまま階下へ降りていった。
「では、部屋に帰ります」
部屋に帰ると、大黒が待っていたようにやってきた。暫くすると、慌てて七五三野が食料を背負ってやってきた。
「送迎と運送と、仕事があってさ。ごめん、遅くなった!」
琥王と、リビング二行くと、天満を殺した犯人を捜そうとしてみた。しんみりと、通夜のように過ごしたいのだが、近くでテレビが鳴り響く。キッチンから異音がしてくる。
七五三野と大黒がいる部屋が、静かな筈はなかった。
「あの、大黒さん、お店は?」
「神々廻がやっているよ。俺まで面倒をみられないから、ここに居ろと命令されたよ」
大黒は、まるで家の主のように、ソファーに寝転びテレビを見ていた。
「あの、七五三野さん、何を造っていますか?」
台所から、黒い煙が出ていた。俺が、換気扇を回すと、余計に煙が増えた気がする。
「ラーメンだよ」
ラーメンで黒い煙が出るのか。世の中には、不思議な事が多い。
俺はリビングに戻ると、空いている椅子に座った。でも、煙が目に染みる。
リビングには、樹神シリーズの絵が追加されていた。ここは、森の中と同じであった。そこに来訪を告げるチャイムが鳴った。
七五三野が出ようとしたが、気配で分かるので制止する。
「大丈夫です。俺の親です」
親といっても死んだ親ではない。ドアを開けると、安廣が立っていた。
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