37人が本棚に入れています
本棚に追加
にこやかな、七五三野はその体格で人目を引いていた。ここで見ても、大きい。しかも、半袖から覗く腕には筋肉しかない。
ふらふらと店舗などを覗くと、レストランも確認してみた。レストランの大きな窓の向こうは、森になっていた。
ホテルの配置図を見ると、テニスコートや、他の運動施設もあった。イベント用なのか、野球場なのかのグランドもある。
「はいはい、お待たせ。チェックインしてきたよ。これが部屋ね。一人部屋に薬師神。琥王は俺と一緒だけど、我慢してね」
カードキーを渡された。
「はい」
これが、自殺した男性が最後に居た部屋であるのか。
「薬師神。部屋番号を教えて。結構、離れているね」
十一階に部屋はあった。琥王の部屋は、八階になっていた。琥王はカードキーを見ると、メモしていた。
「七五三野さん、ありがとうございました。俺、朝は居ない予定ですので、俺の分のチェックアウトをお願いします。ホテルの代金は、塩冶さんが支払済と伺っていますが、よろしいですか?」
木を見つけたら、飛んで帰る。
「まあ、聞いてはいるけど。本当に送迎だけでいいの?俺は、明日も温泉に浸かって帰るけどさ。琥王は、ゆっくりでいいかな?」
「……はい」
琥王が、俺を睨んでいた。俺は、飛んで帰るが、琥王までもは抱えて飛びたくはない。
「では、部屋に行きます」
琥王も、俺の後ろについてきていた。琥王は、エレベータに乗ると、十一階のボタンしか押さない。
「朝は森のくまのバイトだからさ。それまでには帰る」
「あのなあ。それまでに、木を見つけるの?」
見つけなくてはいけない。
部屋に入り電気を付けると、シングルの部屋は結構狭かった。コンパクトな、風呂とトイレ、ベッドの横にテレビ。ビジネス用にしては階が高いと思ったが、角のようで、間取りが悪かった。三角のような部屋になっていた。この角部屋だけ、安価に提供しているのかもしれない。窓の下にベッドがあって、窓の外を見るには、ベッドに乗らなくてはいけなかった。
ここで窓を開ける理由といえば、タバコを吸ったのだろうか。部屋を見ると灰皿があり、禁煙ではない。
靴を脱いで、ベッドの上の窓から外を見ると、暗い森しかなかった。
自殺した木の周辺には、白い花など無かったという。夕食を済まし、ベッドの上に立って、タバコを吸っていたのだろうか。
どうにもメモと部屋の配置が合わない。
最初のコメントを投稿しよう!