モーニングコーヒー

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 朝食を作る。  温めたフライパンに薄切りのベーコンを並べ、端が丸くなるくらいまで焼く。焦げ目が適度についたそれを丸皿に並べ、軽くフライパンを拭きとってからマーガリンを落とす。じゅわじゅわ、と泡立ってきたらすかさず溶いた卵を流し込む。  朝焼けの淡い日射しの中に、鳥の影がよぎった。  外を見ると、店の横の木の枝に小さな鳥の姿があった。  おはよう、今日もいい天気だね。  ちゅんちゅんと鳴く小鳥に笑みを浮かべながら、卵をかき混ぜる。手早くやらないとふんわり黄色のスクランブルエッグにならない。油断すると、大小さまざまのまとまりのない塊になってしまう。  お前は卵料理が下手だな、という言葉を思い出す。  見ておれ、という気持ちで作ったスクランブルエッグは、まだ半熟で艶が残ってて、美味そうに出来た。それをベーコンの横に乗せ、後ろのオーブンの中を覗いた。  赤暗い熱に当たっている食パンがじりじりと焼けてきていた。  私は表面がちょっとだけ小麦色になったパンが好きだ。見た目に焼けていなくても、白い部分もさっくり焼けていて中は柔らかい。  スクランブルエッグとは別の皿に食パンを取り出すと、一枚にはマーガリンと小豆を、もう一つには何もつけずにおいた。  美味いパンは、焼いただけで美味いんだ。  新聞を広げ、図々しくテーブルに座ったまま朝食を待っていた姿がふとよぎった。  昨日の残りのサラダを取り出すと、キッチンに立ったまま、いただきます、と手を合わせた。焼いただけのパンを手に取り、口へ運ぶ。さく、とささくれ立ったパンが弾け、香ばしくもほのかに甘い味が広がった。 「うん、美味い」  そう一人ごちながら朝ごはんを食べる。  他に誰一人としていないまっさらな店の中は、木目の息づかいで綺麗に静かに落ち着いていた。壁かけの時計だけがこちこちと時を刻み、窓の向こうの道路では車が慌ただしく行き交っている。  手早く朝を済ませて皿を流し台に置くと、窓際で小鳥の鳴く声がした。  それはまるで何かを求めるような、訴えるような鳴き声だった。
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