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後輩の元カレが偶然店に来て
ドラマのように鉢合わせた。
元カレは唇を噛み締めていたが
やがて連れのテーブルに戻った。
閉店後、片付けをしている時だ。
カウンター席の足元で何かがキラリ。
定期入れの装飾がライトに反射してた。
『久代 春花』
定期入れの持ち主は後輩の名前だった。
偶然が2度も起こるなんて
まるで運命みたいじゃないか。
もしかしたら最後のチャンスかもしれない。
閉店間際に鳴る電話の音。
何故か後輩からだと直感でわかった。
「はい『far away』です」
落ち着いた声で話した。
「先ほど店にいた者です。忘れ物に定期入れはございませんか?」
「久代春花さんですね。カウンター席の下に落ちていました。いつ取りにお越しになりますか?」
「珈琲が飲みたいので今から参ります」
思わず笑みが漏れた。
「かしこまりました。お気をつけて」
「にゃー」
眠りかけていた空が鳴いた。
やがて珈琲の準備が整った頃、
店の前に停まった微かなブレーキ音。
念のため店に鍵をかけてから
コンクリートの階段を上った。
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